【ストーリー】
朝からママにこき使われるカミタマン。気に入らないので、起こしに行った伸介やパパに木槌のパワーで攻撃。
やっと朝飯にありつけるかと思いきやゴミ出しにかり出される。
二人して出勤登校のパパと伸介。
パパ「何!? お前はランドセル」
伸介「パパはタオルで?」
パパ「あのやろー」
伸介「……やめてよパパあの野郎なんて言うの。あれでも僕の親友なんだから」
パパ「お前先週知り合った奴今週はもう親友になってんのか。もしかすると来週は結婚したいなんてバカなこと言うんじゃないだろうな~」
伸介「パパ!」
パパ「パパ、お前信じてるからな! 心配だなあ」
伸介「……」
一方カミタマン、ゴミ出しから帰ってくれば自分の飯はないわ、床でもだえていたら掃除機で吸い込まれてゴミに出されるわで、さすがにがっくり。
「ひどい、ひどすぎる。おらっち神様。とっても尊敬されなきゃいけない神様。それをこんなゴミ箱に……」
人間に尊敬されるには……。やっぱりカミタマンが相談できるのは伸介しかいなかったが、伸介もそんなことを言われても困るのである。その場にいた横山のアイデアが、「神様なら神社のひとつも持たなくちゃ」だった。
二人に神社を見せられたカミタマン、その気になって、根本家の庭に「カミタマン神社」を建設。最初いい顔をしなかったママも「もしかたらお賽銭ががっぽがっぽ入るかも」「そしたらマイカーが買えるかもよ」という子ども達の言葉に、ノリノリに。
伸介と横山も、街角にポスターを貼って、応援するのだった。
仕事から帰ったパパはポスターをみかけて苦い顔。しかし「お賽銭でマイカー」ですぐに豹変。
ポスターをみかけた老人第一号参拝者の悩みは、腰痛。
カミタマン「おいパパ! マッサージマッサージ」
パパ「!?……」
ママ「パパ、マイカーマイカー」
続いての老婆の悩みは神経痛。
カミタマン「おーい! ママ!」
雲行きは怪しいどころか、いつの間にか根本家は老人の宴会場になってしまい、賽銭も雀の涙。キレてしまったママを最初はなだめていたパパだが、ついに猛烈な夫婦げんかに。
けんかの収拾を一人押しつけられた伸介は、カミタマンのもとに走るが、すっかりのぼせあがったカミタマンは、伸介の話をまともに聞かない。
伸介「お前のためにパパとママがけんかして……」
カミタマン「おお、で離婚したか?」
伸介「いや、でもこのままじゃ」
カミタマン「伸介、お前どっちにつくんだよ。覚悟だけはしておけよ」
伸介「バカ! その前になんとか」
カミタマン「待ってろ、今いい気分なんだから……」
伸介「いい加減にしてくれ! お前の責任なんだかんな!」
結局カミタマンは伸介をネモトマンに変身させ、事態の収拾に向かわせるのだが……。
ネモトマン「平和を愛する神の使者。ネモトマン!」
ママ「あなたどこの小学生?」
パパ「全く人のうちの夫婦げんかをからかいに来るなんて。親はどういう教育してるんだ」
「両親」にこてんぱんにやられて、ネモトマンはカミタマンのもとに帰還。
「だからネモトマンになるのやだったんだよ……」
「お前ならできる。絶対できる!」
カミタマンは、無責任にも再度、ネモトマンを送り出した。
ママ「またあんた?」
パパ「お前うちにうらみでもあんのか?」
ネモトマン「いや、私はただ、二人の夫婦げんかを、この剣にかけて止めようと」
ママ「それが大きなお世話だって言うの!」
ママはネモトマンの短剣を奪い、お尻をチクリ。
ネモトマン「いてーーーっ!」
さすがの伸介も怒り爆発。カミタマンを棒きれで追い回す。
「この野郎! ネモトマンになっても何にもなんねえじゃねえか!」
一方パパとママは。
ママ「……あなた、あの子どっかで見たことない?」
パパ「誰?」
ママ「あのさっきの変な子」
パパ「ああ、きっとなんか家庭に問題があって」
ママ「そうね……きっと、何か恵まれない家庭の子なのね」
パパ「ああ、ママ、うちの伸介もあんな風にならないように」
ママ「そうね……パパ、仲直り」
そこへ伸介に追われカミタマンが。
パパ「ママ、もとはと言えば、二人のけんかも、あのカミタマンのせいだ!」
親子の共同戦線に窮地に追い込まれたカミタマンは、カミタンブーメランを発動させたが、手元狂って自爆。カミタマン神社は灰と消えてしまった。
カミタマン「ああ、おらっちの神社が……神社が……」
おいおい泣きむせぶカミタマンを見る伸介の顔は複雑だった。
夕方の食卓。すっかり仲直りしたパパママのべたべたぶりに、マリは怒っている。
伸介の部屋では、落ち込んで熱を出してしまったカミタマンを、伸介が看病していた。
伸介「神様でもやっぱ病気になんのか。明日病院連れて行って、注射打ってやっからな」
カミタマン「注射!? いやいや~!」
そんなカミタマンを見て笑う伸介は、どこかちょっと、保護者めいていて。
【みどころ】
第一話とこれで、だいぶキャラ設定が明確になる。分別くさい発言が多く無責任なカミタマンの実年齢は不明だが、この回や、カミタン島ツアーでのホームシックの様子を見るに、伸介よりもむしろ幼い、わがままな幼児のような側面を感じさせる。この回、家族も自分もかき回されて、いいだけひどい目に遭っていながら、自滅してわんわん泣き出したカミタマンを見る伸介の表情が変わっていく演出は素晴らしい。手のつけられないわがままな子ほど、ふと見せる弱さがいとおしく、それを感じ取れる男の子である伸介は、スタートラインから決して「何もかもほとんど最低少年」なんかじゃないのだ。51話の中での伸介の成長は、実は少しも変わらない、変わることのできない自分の価値を知る過程であると思う。他人のものさしで測られるエリートやあらゆる「一流」の価値を皮肉り、それでもそういう価値観の渦の中で悩んだり苦しんだり、また遊んだり笑ったりしながら成長していく、当時のありふれた平凡な、特別な才能のない男の子への、これは作り手からの応援歌なのだ。
ところでこれは、浦沢さんの脚本で、第一話は別の人だ。大半の脚本を担当した浦沢さんが、ネムリンでは最終話を担当せず、カミタマンでは第一話を担当していない。この登用は大胆だと思う。ネムリンでは失敗していると思うが、カミタマンではキャラの設定の理解の仕方にブレもないし、二度にわたって無駄と知りながらネモトマンを送り出し、よりネモトマンがひどい目に遭うギャグのパターンも踏襲している。見事だと思う。
この回、ネモトマンの短剣は、ネモトマンの尻に、ママの手で刺される(笑)のだが、私が気づいた限りでは、この剣がなんであれ刺さったのはこれ一回きりだ。唯一の活躍が自分の尻とは、これではキャラクター商品にもしにくかっただろうなw
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