【ストーリー】
縁台将棋に興ずるパパとカミタマン。窮地に立たされたカミタマンは、パパがよそ見をしている隙に杖のパワーで将棋盤を回転し、形勢を「逆転」した。
そこに、ママが買い物かごを持って登場。パパに夕ご飯のカレーライスの材料を買ってもらおうと思ったのだが、将棋の劣勢故か買い物が嫌だったのか、パパの姿は煙のように消えていた。
ママはじゃあとカミタマンにお使いを頼もうとするが、カミタマンも素早く姿を隠していた。
ママ「でもダメよ。カミタマンの弱点知ってんだ」
ママは柏手を打ってお祈りを始めた。お祈りにつられ、ゴミバケツから姿を現してしまったカミタマン。
ママ「かみかみたまたま~、かみかみたまたま~」
カミタマン「あ、いや、だめ、やめて、あん」
もだえるカミタマン。ママはお使いのメモをカミタマンに渡して、うちの中へ。
カミタマン「あん? 冗談じゃないよ! おらっちは神様だよ。神様が……何だ? 豚肉の細切れ400g? 買えますか!? ……何だ? にんじん三本タマネギ二個。ジャガイモ四個! どーして買わなきゃいけないの!? ……あん? 福神漬け一袋。買えるわけないっしょ!? ……なになに? 無ければ花らっきょ。てやんでえふざけんな!」
伸介はパソコンゲームに夢中。
カミタマン「伸介!」
伸介「何だよ」
カミタマン「伸介ちゃん?」
伸介「だから何だよ?」
カミタマン「伸介く~ん」
伸介「何なの?」
カミタマン「伸介さん」
伸介「(ちょっとうれしそうに)どうしたんだよ?」
カミタマン「伸介さま~ん(ウインク)」
伸介「(にっこりして)なあに? カミタマン君?」
カミタマン「買い物行ってこーい」
突然横柄な態度になったカミタマンを、伸介は買い物かごでひっぱたき、ゲームに戻る。
カミタマン「お!? ああ、その神様をバカにした態度! もう許さないぞ。カモンカカモン……」
伸介「あ、カミタマンお前まさか!」
カミタマン「カカモカカミター!」
コントローラーを放り出して後ずさる伸介は、無理矢理ネモトマンに変身させられた。
カミタマン「ネモトマン。正義を守るためだ。カレーライスの材料を買ってきなさい」
ネモトマン「(うふ)とーお!」
物干し台から買い物かごを持って飛び立ったネモトマンは、空をひとっ飛び。まずは肉屋さんに降り立った。
ネモトマン「神にかわって悪を切る! 正義のスーパーヒーロー、爆発! ザ・ネモトモン! ……豚肉の細切れ、400g下さい!」
続いて八百屋へ。
ネモトマン「爆発! ザ・ネモトマン! にんじん三本タマネギ二個ジャガイモ四個」
続いて乾物屋(?)へ。だいぶへばったネモトマン。
ネモトマン「福神漬け一袋。無かったらラッキョでいいそうです……」
さて、買い物帰りのネモトマンは苦悩していた。何で正義のためにカレーライスの材料を買わなくてはいけないのか? 考えれば考えるほど理解に苦しむ……。
ネモトマン「正義がなんでタマネギ二個なんだ……ああ……」
帰宅したネモトマンは、疲れ切ってぶっ倒れてしまった。
その上、カミタマンがママから買い物のお駄賃にジュースをもらっているのを見た伸介は、
伸介「……カミタマンのやつ、カレーライスのどこが正義だ!」
と怒り、部屋に戻ってネモトマンスーツ一式を取ってくると、カミタマンにぶつけて宣言した。
伸介「カミタマン。お、俺今日限りネモトマンやめさせてもらう!」
カミタマン「こ、こら伸介。正義のスーパーヒーローやりたいって言うから、ネモトマンやらせてやったのに」
伸介「ネモトマンのどこが正義のスーパーヒーローだ! 豚肉の細切れ買いに行く正義のスーパーヒーローがどこにいる!? 自分の都合のいいときだけ僕をネモトマンにしやがって。もうやだ! 僕は普通の少年に戻る!」
あかんべーをして出て行く伸介を、「お前なんか普通の少年に戻って平凡な余生を送ればいいんだ!」と強気で送り出したカミタマンだったが、さて、新しいスーパーヒーローを見つけなくては……。マリにも冷たくあしらわれたカミタマンは、街に出てのぼりを立て、スーパーヒーローの募集を開始した。
カミタマン「さあさあよってらっしゃい見てらっしゃい。君もスーパーヒーローだよ。スーパーヒーローに、なろうぜーい!……」
誰もほとんど立ち止まりもしない。
カミタマン「最近の子ども達には正義のスーパーヒーローって人気ないのかなあ」
そこに横山が。
カミタマン「お、横山お前ヒマか? ……じゃ、正義のスーパーヒーローにしてやるよ」横山「カミタマン、正義のスーパーヒーローって疲れるんだろ?」
カミタマン「……そりゃまあ、悪漢と戦ったり」
横山「そういう積極的な生き方嫌い。俺なるべく疲れないように生きてんの。人は省エネ人生って言っている」
カミタマン「バーカ! 勝手に好きなだけ生きろ!」
最近の子どもに、ああいうの流行ってんのかな。正義のスーパーヒーローより老後の安定した生活を考える……。
嘆くカミタマン。そこにパパが現れ、物珍しそうに衣装などいじくって。
パパ「正義のスーパーヒーロー募集中。面白そうじゃないか」
カミタマン「でしょ? でもね、でもだーれも来ない……」
パパ「まあ、最近の子どもは、正義とかスーパーヒーローなんて、あんまり興味ないんじゃないか? もしあるとすれば、ほらよくうちに来るあのネモトマンとかという変な子、ああいうどこかで教育を間違えた、なんて言うかはっきり言えばバカ。あの子ぐらいのもんじゃないか。まったくあのネモトマンとかという子の親の顔が見たいものだハハハハハ」
ジト目でパパを見るカミタマン。
パパ「ようし、私がなってあげよう」
カミタマン「エエッ!?」
パパ「正義のスーパーヒーロー、私の夢だった」
ターザン、スーパーマン、桃太郎……パパのイマジネーションに広がる夢のヒーローに扮した自分の姿……。
パパはおもむろに地面に横たわり、カミタマンをせきたてた。
パパ「何を迷ってるんだ! カミタマンさあ早く私を正義のスーパーヒーローにしろ!……さあ、早くう~ん」
よがりだすパパにあきれたカミタマンは、パパを放置してその場を逃げ出す。
カミタマン「冗談じゃないよな。あんなフケたスーパーヒーローなんてさ」
だがその気になったパパはあきらめない。ついに自分で衣装を用意し、「新ネモトマン」となったのだ。
お嬢さん、荷物をお持ちしましょうなどと言いながら、ナンパまがいの行動で頬を叩かれる新ネモトマン。いつかのネモトマンがフミ子ちゃんに叩かれたように……。
新ネモトマン「トコロテンのおいしい店知ってますから……」
あげくの果てに自作のテーマソングを歌い出した。
新ネモトマン「新ネーモトマーン。僕はつーよいんだぞー。新ネーモトマーン……♪」
カミタマン「頭痛くなってきた……」
ヤクザ風の男の頭上に植木鉢が降ってくるのを見た新ネモトマンは、男を突き飛ばすが、逆効果で男を痛い目に遭わせてしまった。そして男ににらみつけられた窮地の新ネモトマンは、解決をカミタマンに押しつけてそそくさと隠れてしまう。どう考えても罪のないヤクザ風の男をカミタンブーメランで退けたカミタマン。
調子よく姿を現した新ネモトマンに向け、カミタマンはブーメランを放った。しかしこれが通用しない。あげくに新ネモトマンにブーメランをかじられてしまう。
新ネモトマン「うん、うまいなこれは……」
カミタマン「うわいたたた! おいやめろってば……一週間に一度しか使えないのころっと忘れてた」
さて、公園では伸介が、何かストレスたまってるっぽい不思議な一人遊びをしていた。
カミタマン「伸介ーーー! 助けて、新ネモトマンが」
伸介「新ネモトマン?」
新ネモトマン「まてーい」
伸介「あれが新ネモトマン。誰なの?」
カミタマン「伸介のパパ」
伸介「ええっ!?」
我が子の前で決めポーズをとる新ネモトマンに、伸介は大ショック。
伸介「パパやめてよ」
新ネモトマン「バカ者、今日から私はお前のパパじゃない。新ネモトマンなのだぁぁぁ!」
あまりのパパの姿に泣きが入る伸介。
伸介「ああ~ん……。カミタマンどうにかしてよ」
カミタマン「それがさ、ブーメランも今週中はだめだし」
天を仰ぐ伸介を尻目に新ネモトマンは
新ネモトマン「さあ、みんなで一緒に歌おう。新ネーモトマーン、僕はつよいんだぞー。僕は僕なんだぞー。ぼーくは力持ちなんだぞー」
「小」岩を持ち上げる新ネモトマンに危険を感じ、二人は公園を逃げ出した。
新ネモトマン「新ネーモトマーン、僕は偉いんだぞー」
ブーメランも使えない。手詰まりのカミタマンを逆になぐさめながら、伸介は決意した。
伸介「カミタマン! 僕を再びネモトマンにしてくれ! 新ネモトマンを救えるのは僕しかいない。ネモトマンしかいないんだ!」
カミタマン「わかった」
自転車でリヤカーをひく新ネモトマン。リアカーには宣伝のノボリ。
「新ネモトマン君」
新ネモトマン「うん? その声は」
ネトモマン「正義のスーパーヒーロー、ザ・ネモトマンだ!」
新ネモトマン「いいや、正義のスーパーヒーローはこの私だ! ふははは、ぱ!」
ネモトマン「いや違う。君はただのパパだ。伸介君を困らせないで、早くパパに戻りなさい」
新ネモトマン「何をこしゃくな……」
ネモトマン「仕方ない。私たちは戦う運命にあるようだ」
そして倒錯の親子対決が始まった。
ネモトマンは新ネモトマンにお尻ペンペンされて劣勢。それでも逃げないネモトマンを見るカミタマンは、新ネモトマンにだけ効く必殺アイテムを登場させる。
カミタマン「ネモトマン、これを! 新ネモトマン退治お守り」
そのお守りにはママの写真が。それをネモトマンが振りかざすと、ママの顔に角が生え牙が生え、般若のようになりパパを怒鳴り散らすのだ。新ネモトマンはたちまち大地にひれ伏した。
のびてしまったパパをリアカーにのせ、帰路につく二人。
伸介「カミタマン、僕ネモトマンやり続ける。またパパが新ネモトマンになったら困るもん。正義のスーパーヒーローなんてくだらないもの、僕くらいしかつとまらないよ」
カミタマン「まあな」
笑いあう二人。
【コメント】
買い物袋さげて空飛ぶヒーロー(笑) 三流神様山田君の回ではおかもち、いやああり得ないな。
この回はギャグ一辺倒でウエットな要素はまるでない。そして、ヒーローパロディとしてのギャグヒーロー番組のテイストが爆発している回でもある。東映自身が正統派ヒーローを多数輩出しつつ、自らパロディで笑いのめしているわけだ。
スーパーマンは浦沢氏お気に入りのようで、ルパン三世でも真正面から扱ってギャグにしている。とは言え、彼自身は本当にこれらヒーローものを愛していると思うのである。一種の照れ隠しのリスペクトなのではないか。この番組そのものが、人情、感動を扱うときにはいつもギャグで笑いのめしつつ、それらを本当に小馬鹿にはしておらず、ギャグで照れ隠しをしながら表現するという特徴を持っている。
オタク的視点。
伸介の遊んでいるのは、「ゲームパソコン」である。実際のこの番組の放映当時はたぶん「ファミコン」世代である。ペットントンのトんでるセロリ婆さんの専用パソコンといい、この渋いグリーンのキーボードにカセットスロットという実際に存在しないマシンデザインといい、小道具の人もしくは脚本家そのものが、こうしたおもちゃに詳しい人だったのかもしれない。
さらにやってるゲームはどうもドンキーコング(もしかしたらファミコン版ですらなくテーブルゲームの)のようであるが、カセットには「ステップアップ」と書いてある。BGMというか効果音も、もしかしたらさらに別のゲームのものかもしれない。
カミタマンがおつかいのメモ見ながらぶつぶつこぼすシーンは絶妙。台本では単にらっきょとなっているところを、提供の桃屋が出している瓶づめらっきょの商品名「花らっきょ」にしている。てやんでえふざけんな、でタイトルインする間が最高で、爆笑した。桃屋の商品は常に根本家のダイニングテーブルに置いてあり、桃屋の塩辛はマリの好物でもあるという設定になっている。
追記:
ネモトマンの見栄切りのセリフに「爆発!」が加わったのはこの回が最初かな?
さらに追記:
「カミタンブーメランは一週間に一度しか使えない」という設定はこの回初めて出てくるが、いつのまにか何度でも使えるようになっている。カミタマンの成長ということかもしれないが、そもそもネモトマンはカミタマンにだけは滅法強くブーメランも効かないので、血筋的に新ネモトマンにもカミタンブーメランは通用しないのかもしれない。
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