【ストーリー】
朝ご飯の平和な風景だが、ママにせかされて慌ててご出勤&通学のパパとマリに対し、悠々とごはんをかき込み続ける伸介。
ママ「伸介今日テストの日じゃなかったっけ……?」
伸介「おかわり!」
下校時。
横山「ねえうちでパソコンやろ」
伸介と横山は女の子に声をかけるが、二人揃ってひっぱたかれるはめに。何をやらかしたのかは詳細不明。
伸介「じゃあ1時に、いつものとこでな……」
横山と約束をかわして、帰宅する伸介。当然ママが待ち受けている。うまく(?)誤魔化してランドセルを投げ出し、さっさと遊びにでかける伸介。
残されたママはテストを見てガク然。
「18点45点28点39点45点……ひっどーい!」
そこにマリも帰宅。一緒になって兄の学力低下を嘆く。
マリ「お兄ちゃん……昔からこんなに……?」
ママ「バカじゃなかった」
マリ「いいのそんな言い切っちゃって?」
……中略……
ママ「伸介の学力低下は、去年の春頃かなあ……5年生になったとたん」
マリ「それじゃカミタマンがうちに来た頃じゃない!」
ママ「そうなの」
マリ「そう言えばお兄ちゃん、カミタマンが来た頃から急に性格明るくなって」
ママ「明るくなりすぎて成績落ちるってことあるかしら?」
マリ「あるみたい。比較的頭のいい子って、みんな暗いもん」
ママ「じゃやっぱり伸介の学力低下の原因はカミタマンに?」
マリ「ママ、そんなことカミタマンに言っちゃだめよ。カミタマン傷つくから」
マリ「わかってるわよ。カミタマンはカミタマンなりに、伸介のこと大事にしてくれてるもん」
ところが当のカミタマン、伸介の部屋の物陰で、折しもパパのおみやげの残り物のおはぎを盗み食いしている最中だったのだ。
「もう完全に、傷ついてしまった……」
(※以下カミタマンの回想もしくは妄想)
そう言われてみれば、出会ったばかりのころの伸介、まだなんとなく勉強しなくちゃいけないみたいな気持ち、あったのに……
最近じゃあ……
「ヘイ、カミタマン! 遊びに行こうゼイ!」
これだもんなあ……
(※妄想終わり)
カミタマン「責任感じちゃうよなあ。落ち込むよ……」
伸介「さっきから何してんの?」
ぶつぶつこぼしながら歩いていたカミタマンは、横山に待ちぼうけを食わされ、公園で寝そべる伸介とばったり。思い立って、伸介に少しは勉強も、とおずおず言い出してみるが。
カミタマン「昔薪を背負って一生懸命勉強した、力道山という偉い人が……」
伸介「カミタマン、俺に説教する気?」
聞く耳を持たない伸介であった。
カミタマンと別れた伸介はやっと見つけた横山に八つ当たり。横山は伸介をなだめるためにおしるこをおごる。そこでグチる伸介の話を聞いて、横山はカミタマンに意味不明の逆ギレ。伸介はそれをなだめるのに鍋焼きうどんをおごる。おしるこで鍋焼きうどんを得した気分の横山は、やはりグチグチとこぼし続けるカミタマンを見つけておしるこをおごり、二杯目の鍋焼きうどんにありつくが腹をこわしてしまう。なぜか横山は伸介に電話。なぜか伸介は仏壇のみかんを持って横山の見舞いに。
一方カミタマンはマリから本音を聞き出し、彼女の助言に従ってしばらく伸介と離れて暮らすことを決意する。マリの友達の家の焼き肉屋さんで働くことに。
また横山から「お前のとこのおばさん、伸介の学力低下をカミタマンのせいにしちゃったんだって」と聞いた伸介は、帰宅してママに噛みつく。
伸介「何でもカミタマンのせいにするのよくないよ!」
ママ「どうして!?」
伸介「だってカミタマンは俺の友達だもん! 友達の悪口言われちゃ!」
ママ「成績が悪くなる友達ならいない方が!」
二人の間に割って入ったマリから、カミタマンの決意を聞き、伸介はカミタマンの働く焼き肉屋の裏手に全速力で駆けつける。
伸介「やめてくれ! だめだよそんなの。俺のためにだめだよ!」
カミタマン「伸介。カミタマンはどこにも行かない。伸介、約束してくれ。一生懸命勉強して、カミタマンを迎えに来てくれることを。カミタマンはそれまでここでがんばる」
伸介「そんなのやだよ、一緒に帰ろう?……ようしこうなったらネモトマンになって!」
カミタマンの木槌を取ろうとする伸介。
「やめろ、伸介!」つい、カミタマンは手を上げてしまう。
カミタマン「伸介だけじゃなくて、カミタマンも伸介に甘えていたんだ」
伸介「俺、やってみる!」
それから一週間、伸介の猛勉強が続いた。
いよいよ、テストの日。横山や少女たちに目もくれず、ランドセルを家に置いて、いっさんにカミタマンの元に駆ける伸介。
「15点? 8点、11点、10点! 何よ前より下がっちゃったじゃないの~」へなへなと崩れ落ちるママ。
だが……
「カミタマン!」
「伸介! どうだった?」
「下がった!」
「エエッ」
「俺の成績下がったの、カミタマンのせいじゃなかったんだ」
「あん?」
「あれだけ勉強して下がったんだもん。カミタマンと遊んでた方が成績よかったんだもん」
「エエ!? どういうこと?」
「カミタマンと遊んでた方が、一人で勉強するよりいいってこと!」
「う~ん、いいのかなあそういう結論の出し方……」
「いいんだって!」
「……そうかなあ……」
「そう、だって」
「それもそうだな!」
【みどころ】
私はこの話、マジで涙してしまったのだが……。
一面、このオチをして、「元も子もない」「どうせ世の中そんなもの、みたいなさめた展開」という論調を、ネット上で見ることがある。しかし私はそれは違うと思うのだ。フィクションから受け止めるメッセージは人それぞれなので、前記のような感覚を否定することはできないが。
この物語には、作り手の、子どもにとって、人にとって、本当に大切なことは何かというメッセージが込められている。いくつかのものを切り捨て、本当に大切にしたいものだけを残すことで、それを印象づけているのだ。
伸介は、成績を上げるため、自分の力を向上させるため、まして体面のために努力するわけではない。ただカミタマンという友達と遊べる大切な時間を取り戻すため、自分を思ってくれるカミタマンの友情に報いるために努力するのだ。
それが証拠に、努力の成果よりも再びカミタマンと一緒に過ごせるようになれることだけが彼の喜びだったことがわかるのが、あのオチなのだ。
物語の序盤の伸介君も悪い子ではないが、どこかうじうじと頼りなく、自己否定的なところもあった。
その彼が、自称が「俺」になり、元気いっぱい駆け回り、女の子にも声をかけるようになる。マリとママの会話にある通り、カミタマンに出会ってから伸介は「急に明るくなって」成長しているのだ。
努力は悪いことではない、というより大切なことだ。勉強もそうだ。しかし、誰もが優秀な成績になれるだろうか。結果よりも過程が大切だとか言いながら、実際はそうでない価値観の持ち主も少なくないのではないか。
個人的には、はっきり言って、少なくとも真ん中より上になれる見通しが持てないことに本気で努力する気になどなれない。劣等感が深まるばかりではないか。
この展開で、伸介が首尾よく成績を伸ばしたら、悪くはないのだろうがただ説教臭くてつまらない。しかしながらこの驚いたオチも、さめてるとか、ただ笑いをとるだけのひねりでは決してないのだ。こんな子や、こんな友情、すごくいいと思う。いつまでたっても努力の続かないダメっ子でも、いいじゃないか。その思いは、最終回を見るとより強まるのだ。
細部にフォーカスしてみたい。
初見の際、伸介の成績の「悪さ加減」が妙に中途半端だな、それ故にリアルだな、と感じたのだが、これがオチに対する伏線になっていたとは、やられた、と感じた。
カミタマンのみならず不思議コメディ全体に言える「食い物」へのこだわりがこの回は特にすごい。朝食に始まっておはぎ、おしるこ、鍋焼きうどん、カツ丼、みかん……。人形のカミタマンに食わせるのに、なぜわざわざ七面倒なおはぎなのか、誰かが撮影後食いたいだけじゃないのか……。朝食も夕食も小鉢の中身まで本物である。これでは岩瀬君が撮影が進むにつれ太、いや成長するのも無理はない。
夕焼けのシーンなどを中心に、通常の挿入曲でない既成曲のBGMが使われている。これも機会があれば注目して見てもらいたいポイントだ。非常にうまい。
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