季節はそろそろ夏に。ママはポンコツエアコンのフィルター掃除中。そこに横山から電話があり、呼び出されたカミタマンは公園に。
横山の話とは、ズバリネモトマンの正体についてだった。
横山「ほら、何か事件があると、正義のスーパーヒーロー、爆発・ザ・ネモトマン、なんちゃって出てくるあのバカ。……ネモトマンの正体、伸介じゃないの?」
カミタマン「!……ちゃうちゃうちゃうて!」
横山「あんなバカなことできるの、この町内じゃ伸介ぐらいしかいない」
カミタマン「イヤ違う! 絶対違うっち!」
横山「あの無教養な肉づき……どう考えても伸介だと思うんだけど」
横山の脳裏でオーバーラップする伸介とネモトマン。
それをあわてて払いのけるカミタマン。
しかし、完全に伸介=ネモトマンと結論づけた横山は、なぜか学校に電話。
横山「あ、河田小学校ですか? 五年の根本伸介が先生に無断でネモトマンやってました。処分してください」
とりあえず横山をカミタンブーメランで処分したカミタマン。
しかしこのままにはしておけない。ところが公園で釣り糸を垂れる伸介は、あわてるどころか、むしろ淡々として、
伸介「そう、やっぱり。……そりゃいつかはバレると思ったよ。……こうやって日長一日、釣り糸を垂らしてウキを見ていると、何かわかんないけけど人生を感じるんだよね……」
と太公望の心境らしい。
一方横山は、マリに「真相」を報告、最初こそ信じられないという面持ちのマリだったが、
マリ「そういえば……」
いじめっこ男子達に追われていたマリは、公園で兄を見つけ助けを求めたが兄は素早く逃亡、かわりに現れたネモトマンは、いじめっこの親を引っぱってきて、マリを助けたのだった。
マリ「おばさんを連れてくるところなんか、お兄ちゃんらしい」
池。
伸介「カミタマン、僕って何回も何回も言うようだけど、性格が正義のスーパーヒーローに向いてないような気がするんだ」
カミタマン「伸介、そんなこと今さら言われたって、お前が正義のスーパーヒーローやりたいっていうからネモトマンにさせてやったんだぞ!」
伸介「正義のスーパーヒーローって思ったより大変なんだもん」
カミタマン「この! 軟弱もの!」
根本家の庭。
パチンコに大勝ちして大きな顔のパパ。上機嫌のママは洗濯中。さてそこにマリと横山が駆けてきた。
マリ「大変大変!」
ママ「どうしたのマリ?」
息を切らせた横山が「すいません、お水くれませんか?」と頼むとパパは、「いいよ」とおもむろに洗濯機のホースを抜き、横山に向けて放水(なぜだ?)。
マリ「パパもママも驚いちゃだめよ。……ほら、ときどきうちに来るネモトマンとかいう変な子」
パパ「ああ、伸介のことか」
驚くマリ。ずぶ濡れの横山も「知ってたんですか?」と。
ママ「当たり前よ。これでもあたしたち伸介の親なんですから」
マリ「じゃどうして今まで?」
パパ「あそこまでバカやられちゃつきあわざるをえんだろう」
ママ「正体バラして伸介傷つけて、非行にでも走られちゃ」
マリ「知らなかった知らなかった。パパとママがそこまで人間的にできているなんて」
パパ「マリ、親というものは見ていないようで必ずどこかで子どもを見ている。親というものはそういうものなんだ。……結論を先に言うならば、人生は、金だ」
パパの演説中も的確にホースの水は横山を狙い続けていたのだった。
マリ「……お兄ちゃんがネモトマンだなんて、私信じられない……」
ウキを見つめていた伸介は、突然立ち上がり、
「正義のスーパーヒーロー、爆発・ザ・ネモトマンやるくらいなら……いっそこの池に飛び込んで、魚になって」
自ら釣り糸をくわえ、公園の机に寝ころびもだえる伸介。
「活き作りにされたほうがましだ! 活き作り、活き作りにしろ!」
苦悩のあまり奇行に走ってる伸介と、カミタマンのもとに、マリがやってくる。
横山がパパに水道の水を浴びせられている、ネモトマンの力が必要だというのだ。
カミタマン「あらそう、ネモトマンの力、ねえ……。どうする、伸介?」
伸介「へ!? ……それは……」
マリ「どうしてお兄ちゃんが悩むの?」
伸介「イヤ、悩むなんて……」
マリ「カミタマン、早くネモトマンを」
カミタマン「あ、イヤ……それが……」
マリ(カミタマン困ってる。お兄ちゃんも困ってる)「じゃあいいわ、二人にも事情があるだろうから、ネモトマンがうちに来る前に電話入れて、それから来て。約束よ?」
残された二人。
カミタマン「どうする? 伸介?」
伸介「……なるしかないだろ? ネモトマンに。……あーあ、僕にはこれっぽっちの好きな時間も持てないのか」
いっぱしの少年ヒーローもどきのセリフを吐いた伸介だったが、やっぱり自信はなかった。
根本家に電話をして、なおもうじうじしながらも、ネモトマンに変身し、根本家に向かい飛翔する。だが迷いのせいか、途中で木に激突。……大丈夫なのだろうか。
パパ「いいねマリ。伸介を傷つけないように」
もともととはマリの、ネモトマンの正体を見破るための作戦だったのだが、伸介に気を遣いまくっている家族が、横山を被害者にしたてて、ネモトマンの活躍を演出しようとしていた。なのにさっぱり、動こうとしないネモトマン。
マリ「あんた一体なにしに来たの?」
そこでようやく名乗り。しかしなおも、スローモーションのような芝居にすら乗り切れないネモトマン。
そんなネモトマンの脳裏に、カミタマンの「この! 軟弱者!」のセリフが響く。ふつふつと怒りがこみ上げ、ネモトマンは「がおー!」と雄叫びを上げた。
マリの合図で白々しく倒れるパパとママ、そして横山。
マリ「すごーい! さすが正義のスーパーヒーロー、ネモトマン! しぶい!」
反応速度がいつになくステゴザウルスなみに遅いネモトマンだったが、一応喜んでガッツポーズ。これでいいのか?
心配になったカミタマンが、様子を見に帰ってみるとそこには……。
マリやパパママたちにヨイショされているうちにネモトマンの態度はどんどん大きくなっていき、籐椅子にふんぞりかえってパパママに肩や足を揉ませる始末。横山はカラオケで、チェッカーズの「あの娘とスキャンダル」を披露。
この世の全ては自分のためにあるかのようなのぼせた姿のネモトマン。
ネモトマンは正義のスーパーヒーローが一度は必ずかかるという大病、思い上がりにかかっていたのだ。
カミタマン「このままいけばネモトマンはうぬぼれ、のぼせた予約制の正義のスーパーヒーローに……」
(カミタマンのイメージ)
机にふんぞりかえったネモトマン。秘書のカミタマンは靴を磨く。背後にはびっしりの予定表(コメント参照)。電話を受けたネモトマンは、ピンチ出動の要請にも、スケジュールを確認し、「じゃあ来月の三日にね」とにべもなく電話を切ってしまう。
カミタマン「予約制の正義のスーパーヒーロー、こわいっち……」
カミタマンは、「正義のスーパーヒーローレントゲン」を持ち出し、ネモトマンの腹の中をのぞき見る。そこには横柄な全身タイツ人間姿をした、「思い上がり」がやはりいたのだ!
思い上がりを直すには、「思い下がり」を探すしかない。カミタマンは出動。
思い下がりは、ラーメンのなるとの中に潜んでいた。いやがる思い下がりを、注射器で吸い上げるカミタマン。
「悪人どもかかってこーい! 俺は強いんだー! わぉー! ピースピース!」
その頃根本家では、すっかり思い上がりの病に取りつかれたネモトマンが一人ではしゃぎまくっており、さすがの両親もマリも横山も、つきあいきれず去っていくのだっだ。
そこへ帰ってきたカミタマンは、ネモトマンにふずっと注射。ネモトマンの体内に思い下がりを送り込んだのだが……。
横柄なだけでなく強力な思い上がりに、思い下がりはやられっぱなし。
やがて「二人」は根本家の庭に、実体化した。このままでは到底思い下がりに勝ち目はない。カミタマンはカミタンブーメランで助太刀。高く空に舞い上げられた思い下がりのダイビング・ボディアタックで、何とか思い上がりをノックアウトできたのだ。
パパ「全く、ネモトマンの世界も難しいものだなあ」
マリ「お兄ちゃんも大変ね……」
騒動のあとの根本家の夕べの食卓。どこかしょんぼりと伸介が食卓に下りてくると、家族はみんな、気を遣って何事もなかったようなそぶり。
パパ「伸介、カミタマンは?」
伸介「ネモトマンと星空見物だって」
家族「え?」
伸介「庭から見えるんじゃない?」
夜空も高く、マリの指さす先には、確かにカミタマンを背に乗せて空を飛ぶネモトマンの姿が。
マリ「じゃあネモトマンは一体誰?」
振り向いた家族全員の視線が伸介に集まると、伸介はもりもりごはんを食べながらにっこり。空中散歩のネモトマンは、かかしにネモトマンスーツを着せたものだった。
カミタマン「こうしておけば、また当分ばれないっち」
【コメント】
最終話一個前で、本当にネモトマンの正体が暴かれる時点でも、本当にネモトマンの正体をわかっていなかったのはマリ一人である。シリーズ終盤、兄には素直になれずけんかしてボコボコにしてしまうのにネモトマンには素直になれる、というエピソードがあり、裏設定的には、マリはネモトマンのことがほのかに好き(Loveの意味で)なんだろう。それだから兄=ネモトマンという現実を、受け入れがたいし、「ショック」を受けるということになる。
家族みんなが、けなげだがさえない子の空回りのがんばりを、生暖かく見守る様というのは、微苦笑ものだが、何となく心が温まる。
にしてもこの「ヒーロー」に対する「あそこまでバカやられちゃ」というような言いたい放題や、電話で仕事を引き受ける予約制ヒーローなんてあり方は、きわめてユニークで、このシリーズ以外ではまずない。それでもヒーローものへの深い愛を感じるから不思議である。
苦悩する伸介が、公園の机で「活き作りにしてくれ!」と悶えるシーンがあるが、これはペットントンで、ガン太という主人公のネギ太に惚れている(同性愛的な意味である)でぶの少年が、おもむろに庭で服を脱ぎだしパンツいっちょになって、地べたに大の字になり、(要は好きにしてくれ、俺を食べてくれという意味で)「俺を活け作りにしてくれ」と叫ぶシーンのセルフパロである。ペットントンのそれがあまりに強烈で、服も脱がないし釣り糸をくわえるだけの伸介の挙動は、比べればインパクトに欠けるが、ペットントンのあれは、いくら視聴率が高くても二度とやれないと思うので、まあ致し方ないだろう。思春期の子役にあそこまでやらせたペットントンがすごすぎた。
小ネタとしては、予約制ヒーローシーンの背後の予定表をぜひあげておきたい。異常に詳細で、実在の固有名詞も出てきて面白い。
?山田さんちのポチの子守、?丁目アキナちゃんの救助、?んちの夫婦げんかの仲裁、?んと箱根でゴルフ、?ホテルでネモトマンコンサート、?チャリティサイン会、?屋上で美女救出、?で悪ガキ退治、根本マンショー、、?りで交通事故の処理、?公会堂でソロコンサート、?丁目交番で一日巡査、?番地公園で番長激破、六丁目で火事の消火、七丁目?、休日、本町で?、博品館で根本マンミュージカル、フジTV「笑っていいとも?
全ては解読できないが、笑っていいともまである。お化けより愛をこめての回では、お化けの巡回スケジュールにネムリンの「大岩家」が出てくる。遊び心いっぱい。
横山が歌う「あの娘とスキャンダル」。岩瀬君(伸介)がまともに歌を歌うシーンは今後もないが、横山はモスガが間違って冬眠してしまった回にまたマイクを握っている。選曲もしかしすごい。ついでにネモトマンの曲に合わせての振りもかわいい。
この予定表、ネームプレートもそうだが、番組サブタイトル等は、表記は最初から「ネモトマン」であるが、浦沢氏の台本ではかなりまで「根本マン」になっている。
この名前は、ペットントンの根本という変態少年が自分で風呂敷マントをまとい自作のコスチュームを着て、ラジカセでBGMを鳴らして出現する「根本マン」からのスピンオフである。がしかし、一応カミタマンでは神通力で変身させてもらってるし(ヘルメットを脱ぐとどう見てもただの伸介なのだがw)、空は飛べるし、コスデザインも全然違う(胸の文字は根本マンではあろうことかひらがなの「ね」だった)。この区別の意味から、たぶん回を追ってカタカナ表記に統一されていったのだろう。
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