こんな企画書があるらしい。
練馬区は関町あたりに住む10歳の根本少年の人生は暗い。根本少年は、しがないサラリーマンを父に、そしてテレビと立ち話を生きがいとする母を両親に持った小学4年生の少年である。学校の成績は今二つ。スポーツはまるでダメ夫!逆上がりはできない、キャッチボールさえ得意ではない。ましてローラースケートなど……。プラモデルもまともに作れない。パソコン、マイコンも理解できない。ソロバンも習字も歌も楽器も、とにかく人より秀でたものは何もない。だから女の子にモテたことなど一度もない。根本少年の人生にもはや光はない。下がり目はあっても、上がり目はない。ナイナイナイのナイナイナイ。とにかく80年代の典型的な一人の日本の小学生であったのです。
実際には、小学校五年生の設定になっていて、スタート時点では進級したばかり、最終話では六年進級を前に私立中学受験が話題になるなど、放送時期と番組時間は常にピッタリシンクロしている。
第一話で「何もかもほとんど最低少年で」と独白し、好きになった女の子にもふられてしまう伸介少年は、カミタマンと出会い、正義のヒーローネモトマンに変身できる(させられる)ようになり、一年間、五十一話のなかで成長していく。
序盤の話で、友人横山にも「根本には希望はない。とりえと言えば性格がいいことくらい」と言われている。空き缶が蹴れないくらい運動音痴、勉強をちょっとがんばろうと思うと「苦悩」して奇行に走るなど、まさに企画書通りのダメ少年であるようだが……。
カミタマンが自分が調子に乗ったせいで自滅したときや、ホームシックにかかったときなどに見せる優しさはむしろ保護者的で、すでに序盤から、彼の気のいいところやお人好しなほどの優しさは、描かれている。自分で自分を「何もかもほとんど最低少年」と言っていた頃からである。
ネモトマンへの変身も、第一話から変身するたびにひどい目に遭い、朝起こすだの買い物だの、カミタマンのご都合で変身させられてばかりで、当初すごく嫌がっていた。
ついには、ネモトマンをやめると言い出すが、代わりにパパが恥ずかしい「新ネモトマン」になってしまい、これを止めるために自分の意志で変身したことが転機となる。
以降、自分から変身させろと言い出したり、木槌を奪って自ら変身したりするようになる。初めて自力で変身した際は、スーツが後ろ前になってしまったが、このとき偶然にもタタリとノロイの争いを止めて、初めて「事件を解決した」(カミタマン談)ことになっている。
しだいに自信をつけだして以降の伸介は、親もあきれるほど寝てばかりの「二度寝魔」になり、スポーツに関しては、もはやダメっこの雰囲気はなくなる。終盤では野球チームのリーダーをやっているようだ。ちなみに空き缶が蹴れないはずの、人生ゲームに誘った横山がサッカーに行きたがるのを必死で止めたはずの伸介が、直近の回でカミタマンをサッカーのメンバーが足りないと誘ってるあたりは、設定のゆれだがご愛敬。
二度寝魔の話だが、終盤の回では寝間着を別のに着替えて寝るほどマメである。
飯も食いまくっていて、序盤では小柄な丸顔で決してでぶではない(ぽっちゃりですらない)のに、終盤では明らかに、ぽっちゃりからでぶ寄りの体格になっている。これ、実写なので、リアルタイムに伸介役の岩瀬君の体型が変化していったということ。計算すると撮影開始はたぶんまだ彼小四に上がる前だったはずで、小五の役では小さいわけである。これが撮影期間中に見事に成長して、終盤では立派な体格、そして立派な悪ガキを演じている。
カミタマンに振り回されていた、自信のないダメっ子が、家族をあきれさせ、カミタマンをも振り回す悪ガキに成長する。
最終話で、カミタン島に帰るカミタマンの送別会を立派に仕切る彼の姿は第一話のうじうじした感じからは想像もつかない。
結局、勉強はダメなまま、やる気は起こしても努力もさっぱり続かないままの伸介。
だが、私の視点から見れば、こんな魅力的な素晴らしい少年はいない。最終話のオトしかたというのは、「本当に大事なもの」と作り手がどうとらえているかを強調するためのものであると思う。
友達を思う気持ち、友達のためや、友達と一緒にいたいために、がんばろうと思う気持ち。立身出世や序列や金のためでなく、そういうもののために、がんばれる気持ち。けんかをしていても、相手の弱さを見たときに、計算を忘れて気持ちを動かされてしまう根源的な優しさ。
大半のものを、伸介は物語のスタートから持っていた。なかったのは自信だけだ。カミタマンは、(当時の)ナイナイナイのナイナイナイの、どこにでもいた「ダメ」小学生への応援歌だ。
次はネモトマン編。画像ももうちょい足すかも
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