【ストーリー】
スーパーでお買い物の伸介、マリ、カミタマン。片っ端からカートに食い物をつっこむカミタマンに、マリはあきれ顔。
マリ「ちょっとそれ、お金払わなきゃだめなのよ」
カミタマン「ほんげえ? 好きなの持ってっていいんじゃないのか?」
伸介「まさか」
マリ「資本主義がわかってないのね」
商品を戻せと言われたカミタマンは、ぶーぶー言いながら、商品を空中浮遊させて棚に戻していくが、場所はでたらめ。
一方、店舗事務室では、警備員の制服に身を包んだ女性が、新しい仕事を前に張り切っていた。
とらばる聖子「この私がとらばった以上、万引き置き引き詐欺ユスリたかり強盗殺人全てシャットアウト……」
乱雑に戻された商品と空中を浮遊するアジと「ごはんですよ」を追った聖子は、杖を使って商品を動かしているカミタマンを発見した。
カミタマン「何が資本主義だい。おらっちのカミタン島じゃ、欲しいものは何だってタダで手に入るんだかんな……」
聖子「タヌキ!」
警笛鳴らし、カミタマンを追い回す聖子。
聖子「この極楽ダヌキ!」
逃げるカミタマン。
カミタマン「おい伸介マリ! 早く止めてくれこのオバンを」
聖子「そら、今夜はたぬき汁だ!」
カミタマン「あ、こらそこ感じる」
聖子にトサカをつかまれたカミタマンはあえぐ。しかし杖のパワーで何とか撃退、伸介、マリとともに公園に逃亡。
伸介「お前のせいで、あの店で買い物できなくなっちゃったよ……」
そんな伸介の言葉も聞かず、涙激流のカミタマン。
カミタマン「おらっちはタヌキじゃないよう……極楽ダヌキなんかじゃないよう……」
伸介「極楽ダヌキ?」
カミタマン「あのオバンが言ったんだい」
マリ「そういえば、極楽鳥に似てる」
カミタマン「……君たち、おらっちを侮辱するのか?」
伸介・マリ「しないしない!」
カミタマン「じゃ聞くがとらばるって何だ?」
伸介「とらばーゆを読んで、仕事をどんどん変えること」
カミタマン「仕事をどんどん変える? うちの島じゃそんなやつはすぐ死刑だ! あのオバンやっぱり悪い女だ」
マリ「何言ってるの。今流行ってるの。テレビで宣伝してるでしょ」
カミタマン「それが資本主義か? どうなんだ!?」
伸介「知るもんか。そんなのテストに出ないもーん」
一方聖子は、タヌキ出現を店長に信じてもらえず、転職を決意していた。
「こんなところで働いていたら、私の青春は腐ってしまう」
根本家ではママがエアロビのエクササイズ中。レッスンビデオは十日間無料お試し期間中で、その間に記憶にたたき込もうというママのセコイ考えにマリはあきれ顔。
そこへ訪問販売の女性が。それは誰あろうとらばる聖子だった。彼女はタヌキホイホイなる謎のアイテムをオススメに来たのであるが、もちろんママは相手にしなっかった。
そこに伸介が帰宅。
伸介「あぁ! ザ・ガードマン!」
聖子「ふふん、またとらばっちゃったのよねえ」
そこへママのパンティをぶら下げたカミタマン登場。
聖子「極楽タヌキ……」
カミタマン「と、とらばるオバン……!」
聖子「……またオバンって言ったな……奥様、あの痴漢ダヌキは、私がこのタヌキホイホイで必ず捕まえて見せますざますわよ!」
ダッシュで逃げたカミタマンを追って、玄関から消えるとらばる聖子。
伸介「ちょっと止めてよママ!」
ママ「カミタマンって痴漢だったのかしら……」
伸介「洗濯物が風で飛んだんだよ全く!」
聖子「この機械はタヌキの弱みに全部反応することになってるの」
カミタマン「おらっちはタヌキじゃないぞ」
聖子「しっぽ反応」
カミタマン「お!? あらやだ」
聖子「ほうら、しっぽをだしたぞ」
カミタマン「隠したりなんかしてないもん」
聖子「次は音楽反応」
たんたんたぬきのナントカは~かーぜにゆられてぶーらぶら♪
マシンから流れる童謡に合わせ、踊り出すカミタマン。
聖子「ほうら、風もないのにぶらぶらしてきただろう?」
かけつけ、様子を見ていた伸介は。
伸介「カミタマン、お前やっぱり……タヌキだったのか」
カミタマン「いやちゃうちゃう、ほんとはこっちがあのオバンにバカされてるんだよ」
聖子「次は髪の毛反応! スイッチオン!」
ブーメラン毛が猛烈に吸引されて頭から浮き上がる。
聖子「最後に吸い込みスイッチオン!」
カミタマン「おわぁぁぁぁえええ……」
からだごとタヌキホイホイに吸い寄せられる。
そこでカミタンブーメラン発動。タヌキホイホイをはじき飛ばす。
カミタマン「オバン殺し! カモンカカモカカミター!」
巨大なオバンホイホイが空中に出現、聖子を捕縛。
聖子「またお仕事探さなくっちゃ……」
逆転勝利に酔うカミタマン。
カミタマン「ふっふっふっふ、バカめ。やったな伸介」
伸介「お前ってパアだなぁ……」
「とらばるオバン」にヘアスタイルを乱されたカミタマンは、ママと一緒に美容院へ向かう。伸介はサッカーのメンバーが足りないとぶうぶう。
美容院にはまたしてもとらばった美容師聖子が待ち受けていた。
災厄の予感。聖子に髪を洗われて感じるカミタマン。案の定、暴走したパーマ機から煙が……。カミタマンの髪はさらにひどいアフロに進化した。
夕刻の駅近く。
伸介「な、約束しろよな。今度ネモトマンにしたら絶対遊んでやらないからな」
カミタマン「ああ、約束する約束する」
カミタマンの軽い返事、そこへ会社帰りのパパの姿が。そして英会話教材のセールスレディとなった聖子が。
聖子の巧みな話術に乗せられるパパ。30万の英会話教材を買わされた日には、根本家に家庭崩壊の危機が。
カミタマン「何とかするんだ伸介」
伸介「ああ、お前!」
カミタマン「あいつと戦え!」
伸介「戦うのはやだ!」
カミタマン「武器をとるんだ伸介!」
伸介「暴力はやだ! 戦争絶対反対!」
カミタマン「カカモカカミター!」
伸介「わぁ~! 約束破ったなあ! わぁぁぁ~……」
→ネモトマン「神にかわって悪を切る! 正義のスーパーヒーロー、ザ・ネモトマン!」
ばばばばばば-ん(戦闘機風効果音(口)。
パパ「何だお前は?」
ネモトマン「ザ・ネモトマン!」
聖子「変態坊やねぇ」
ぶるんぶるんぶるん……(ヘリコプター風効果音(口)。
勝負にならないどころか、二人の会話すら止められず敗北のネモトマン。
カミタマン「ダメだこりゃ……。こうなったらおらっちもとらばっちゃう。戦争の神様に!」
「戦争だ戦争だ!」「カミタマンが戦争するのよ!」
ギャラリーを集め、広場で向かい合う宿敵。実況は横山。
「二人の長年にわたる憎しみあいが 今、今こそこの戦いのワンダーランドで勝負をつけんとしております! まさに近代社会のロマネスク。さあ、カミタマン、聖子の明日はどっちだ!?」
カミタマンの杖攻撃に、とらばる聖子はとらばーゆで迎え撃つ。さらには秘密兵器「おそなえもち」が。
聖子「神様は昔からね、おそなえもちに手が出せずにくやしがっているの」
伸介「そうか、本当は手が出せるものなら手を出したいわけだ」
かぶりついたおそなえもちが爆発。カミタマンは吹っ飛ばされてちり紙交換のトラックにて退場。 芸の ためなら 女房も泣かす♪
カミタマン「ぎゃはー、とめちくれー! マリ! 伸介~!」
ラストは神業の速さでとらばった聖子の運転するちり紙交換トラックで、いずこへともなく運ばれていくカミタマンであった。
聖子「黄色い小旗 小旗 小旗 黄色い小旗の ちり紙交換♪」
【コメント】
長! といってあらすじ書いただけじゃ面白さのポイントがわからないんで、書き出したらとめどなく……。
準レギュラーとしてこの後もたびたび登場することとなった「とらばる聖子」初登場回。脚本は寺田憲史さんで、一話に次ぐ担当となるが、ここで初登場したキャラを大半の脚本を担当した浦沢氏もどんどん使ってるあたりが興味深い。
そもそも、石森章太郎なり石森プロは、どの程度こうしたキャラ造型に関わっていたのだろうか。カンとしてはメインキャストの名前、設定、原画くらいで、各話に登場するサブキャラは脚本家の創造物だったのではないかと想像するが。ペットントンのガン太くんあたりは、浦沢氏しか創れないキャラと思うし、ってか他にもそういうのいっぱいいるなw
聖子が寺田氏コーディネイトのキャラだとして、あとあとどういう風に引き継いだのだろうか。
このキャラ設定は、今回の話のテーマの含めて当時の世相を反映していて、ある種突拍子もないネタやキャラの多いこのシリーズにおいて、(斜め後ろから来る変化球くらいの)社会風刺的テイストがある。セリフの毒も特徴。「それが資本主義か」「そんなやつは死刑だ」とか言ってる片方で、本物の「とらばーゆ」を小道具に使ってるし(笑)
でも何だかんだでたくましい聖子。どんな職業にでも一瞬にしてとらばってしまう様はスーパーウーマンかもしれないし、限りない哀愁を感じさせた佃煮博士あたりと違って生活力旺盛で最後まで元気だった。婦警とか資格は大丈夫だったのかw
めまぐるしく転職する聖子初登場の回だけあって、24分とは到底思えない場面転換の数と膨大なセリフ量を誇るシナリオとなっている。
その他ブーメラン毛に注目。触られると感じるというあり得ない設定が今回明らかにされているが、これについては伸介や根本家の人間は最後まで関知しなかったようである。
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