【ストーリー】
お買い物にでかけようとしたママさんに、「雨降る」と傘を持たせたまではよかったカミタマン。土砂降りで傘は破れ、ずぶ濡れになったママに追い回されるはめに。伸介の部屋にバリケードを築いてたてこもった。
下校タイム。伸介はつきまとう横山にうんざりしていた。親孝行のおかげでローラースケート買ってもらえたというのだが……。
相手にしてもらえない横山はむくれた。
「冷たい、冷たすぎる。根本の心はきっとアイスノンなんだ」
振り返るとそこには、裸の胸にアイスノンを貼り付けた謎の伸介の姿が。
「やっぱし……。やっぱりアイスノンなんだ冷たいな」
取り残された伸介(もちろんアイスノンは横山の心眼にしか見えていない)は、全く別のことを考えていた。
「横山のやつ、本当に親孝行してローラースケート買ってもらったのかな……」
さて、帰宅した伸介は、どうやって入ったのかカミタマンの築いたバリケードを部屋の内側から片付けていた。
カミタマン「そりゃあ、親孝行すれば、ローラースケート買ってくれる親も」
伸介「いるわけないじゃん……だいたい親孝行って法律で禁止されてんじゃないの?」
カミタマン「伸介? お前親孝行についてなんか完全に誤りを犯しとるんじゃ」
伸介「親孝行だろ? 長い石の階段を、お母さんをおんぶして、子どもが登っていく」
お百度参りのような、伸介のイメージ。汗みずくでママを背負って、石段を登る。
伸介「あれだろ?」
カミタマン「そうだよ、あれだよ!」
巡礼の鈴がなる行く先には、お地蔵様と、捨てられた人たちと……ゴミ袋の山と、「ゴミ捨て場」の立て札が。伸介はそこにママを捨てて去っていくのだった。
あきれたカミタマンはトンカチで伸介の鼻を一発。
カミタマン「バーカ! 親をゴミと一緒にする親孝行がどこにある? 伸介? お前この歳になるまで親孝行を知らないで生きてきたのか!? 伸介、もう一度よく考えろ。親孝行というものが、一体どういうものなのか」
猪木になったり座禅を組んだり寄り目になったり逆立ちしたりして考えてみた伸介だが、あえなく知恵熱を出してダウン。
伸介「あ~、こんなに考えたの久しぶりだ。頭痛え……」
カミタマン「あ~あ。ようし! カミタマンが、親孝行も知らない子ども達に、親孝行を教えてやろう」
特番、親孝行講座、時代劇編
カミタマン「親孝行には、三つの原則がございます。『手伝う』『ねぎらう』『甘える』……あー、これを、親孝行の三大原則、と申しております」
「母上、手伝いましょう」
「母上、お疲れでしょう」
「母上、いい香りですぅ」
カミタマンの親孝行講座、伸介には少々難しかったようで、またぞろオーバーヒート。
それでも、実地で訓練すべく、公園に繰り出した。
ベンチで足の爪を切ってるおばさんに、いきなり接近する伸介。
伸介「手伝いましょうか?」
おばさん「なによ!? ちょっと、キモチワルイ子ね!」
尻を蹴り飛ばされた伸介。
めげずにレッスン2「ねぎらう」
伸介「おつかれでしょう」
おばさんがおかきを食べるのを、あごを動かして支援する伸介。
おばさん「ナニすんのよこの子は!」
おかきを口に詰め込まれる伸介。
……親孝行レッスン3「甘える」
おばさんの横に座り、においを嗅ぐ。
伸介「いい香り」
すり寄る伸介。しかし不気味がられて逃げられ、ベンチから転落。
……訓練の成果を、実地にためすとき。うちに戻ると、ママは部屋の掃除中だった。
伸介「ママ、手伝ってあげる」
ママ「いいの、もう終わったから」
掃除が終わって麦茶を飲むママの肩をもんであげようとする伸介。
伸介「つかれたでしょう」
しかしわずらわしがられ、まとわりついてるようにしか見えない。振り払われて床に転がる伸介。
うちわで汗を乾かすママ(季節は真夏)。
伸介「いい香り……」
甘えようとするが、
ママ「暑苦しいのよ」
と冷たくあしらわれてしまう。
かなりまでめげずに(カミタマンの講座を信じて)がんばった伸介だが、さすがにみじめさに耐えられない。
伸介「カミタマン、俺、親孝行なんて大嫌いだ!」
走り去る伸介。
カミタマン「伸介! 伸介ー!」
ママ「どうしたのカミタマン?」
カミタマン「伸介がせっかく親孝行しようと思ってたのに……!」
伸介は自販機でジュースをやけ飲み。
ママ「知らなかった……。伸介が親孝行してるなんて……。ああ……。カミタマン、伸介を連れてきておくれ」
メロドラマかギリシャ悲劇が入ってるママの振る舞いに、「くせえくせえ」と呟きながらも、カミタマンは伸介を呼び戻しに。
ジュースの飲み過ぎで腹ボテになった伸介は、カミタマンに促され再び親孝行にチャレンジしようとするが……。
ママ「ハァイ! 伸介、しっかり親孝行してちょうだい!」
カミタマン「伸介、ここは勇気を出して……」
伸介「どうして親孝行するのに勇気がいるの?」
しかし、ママにせまられた伸介は……。
伸介「……できない! どうしても照れちゃう! ママ、ごめん!」
と逃げ出してしまうのだった。
再びジュースのやけ飲みに走る伸介。
カミタマン「伸介やめろ! ジュースの飲み過ぎは
糖尿病のもとだぞ!」
さて、うちではママが、タマネギを刻んで親孝行してもらえない悲しい親を演じ中。庭で何かが砕け散る音がムードを壊す。
そこに現れたのはとらばる聖子。ソフトボールの場外飛球を拾いに来たのだが、大事な植木鉢を壊されたママは、怒り心頭。
伸介は公園の池で素足をばちゃばちゃさせながら、うじうじ。
カミタマン「そりゃそうだな。親孝行なんて急にやれば照れるよな」
伸介「親孝行がこんなに難しいなんて思わなかったよ」
カミタマン「あー、照れないで済む方法、照れないで済む方法」
伸介「仮面かなんかかぶってやれば……」
そこにマリ。とらばる聖子とママがもめてるので、助けを求めに来たのだ。
そこで、カミタマンに妙案が浮かぶ。そう、ネモトマンに変身して親孝行の練習をすればいいというのだ。
さて、もめている二人の元に……。
ネモトマン「ハッハッハッハ……、私は争いを憎む」
今日のネモトマンはひと味違った。ナメた態度のとらばる聖子を、まるでいたずらっ子のようなノリながら、ほとんど一方的にやっつけてしまったのだ。
根本家に戻ったネモトマンは、親孝行開始。
(画像)
つつがなくやりとげ、伸介はカミタマンに報告に。
カミタマン「伸介のやつ、うまくやってるかな……」
伸介「わっ! ……大成功大成功! 親孝行なんてパスイチ! 大成功! 大成功!……」
……
伸介「カミタマン、親孝行してお小遣い値上げしてもらったら、お前にもごちそうしてあげるからね!」
カミタマン「ああ! 期待してる」
張り切って走り去った伸介を見送ったカミタマンは、夕暮れの野原に一人残り、ちょっとブルー。
カミタマン「親孝行か……。したくったってできないやつだっているんだ」
……
さて、そんなカミタマンの元にマリがかけてくる。帰宅してみると伸介とパパが大変なことに。
パパ「お前の親孝行気持ち悪いよ!」
伸介「うわー、助けてこわいよう!」
パパにまとわりついていた伸介がぐるぐる振り回されている。
カミタマン「はあ? どうしたの?」
マリ「お兄ちゃんが親孝行するって、パパの鼻くそほじり手伝おうとしたらパパびっくりして指が抜けなくなっちゃったみたい」
……
カミタマン「親孝行てのは、難しいなあ」
【コメント】
お話の構造は、「スカートめくり」にとても似ている。この世界だけの「親孝行」に対する異常な認識が当たり前になっていて、物語はそれを前提に進む。「この歳になるまで」それを知らずに、できなかった伸介を、カミタマンが励まして「教育」するが、失敗してますます落ち込み、ネモトマンに変身することで、「曲がりなりにも」乗り越える。というものだ。
インパクトはスカートめくりに及ばないが、浦沢色十分の一本。
カミタマンの提唱する「三大原則」はあざとくて教育に悪そう、というか、「健全」な感覚をしゃれのめすノリが楽しい。
輪をかけてひどいのが伸介の勘違いで、ママを置いていく薄暗い場所には「ゴミ捨て場」の看板と、うずくまる年寄りが何人も。これは曲がりなりにも子供番組として今放送したら、えらいことになりそうだ。
そもそも小遣いアップやローラースケートのために親孝行というのがアレなのだが、この話ではそれは別にネタでもないらしい(笑)
面白い、というのではないが、カミタマンが夕暮れの公園で一人残り、遊んだりダンスを踊ったりするシーンは印象深く、全話通してのスタジオノーバの人形パフォーマンスの見せ場ではなかったかと思う。BGMも、全話通してここだけにしか使われないものが流れる。
この話には他にも、少々尺が余ったのではないかと思われる省いても話が成り立つシーンがいくつかあるが、この話に限らず、ペットントンやネムリンと違ってカミタマンの場合、テンポを損なわないこなれた演出がされていることが多い(必ずしも優劣の評価とは繋がらないが)。
ショタ的には、スカートめくりと同じく、落ち込む様や恥ずかしがる様、プレッシャーに苦しむ様を、岩瀬君が大マジに演技しているので、そこだけ切りとるとこんなアホなことで葛藤してるとはとうてい思えない表情が楽しめる。
そしてなんと言っても、裸ランドセルである。アイスノンは貼ってるし、腹から上しか映ってないけど、この唐突な(アイスノン自体唐突だし、半裸にする必然性も全くない)シーンのためだけにわざわざ脱がせて、テープでアイスノン貼ったんだなと思うと、制作スタッフのイカレ具合に惚れるな。20年以上前に、男の子で裸ランドセルを映像化していたとは……。
後日画像追加
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